第144回日商簿記1級の工業簿記・原価計算について

今回の「頑張ろう日商簿記1級合格」は、第144回簿記1級の工業簿記・原価計算に関して、解答速報を基に配点の考え方や得点戦略について見ていきたいと思います。
 
まず工業簿記の解答速報の状況をご紹介します。
第1問は全部で8つの記述問題がありますが、語群から選択する形式になっています。

例えば「購買部門」や「材料消費価格差異」といった言葉は何もないところから解答するのは至難の業です。
 
あるいは「記帳の簡略化迅速化」といったような長い文章も、問題文の中に言葉の例として語群が挙がっていて、その中から選択して書き写すだけです。
 
丸暗記をしなくても語群を見て思い出せれば良いという形になっています。
全部で8つありますが、もし8点という配点ならば6個ぐらいは取りたいところです。
 
第2問の問1はシングルプランというやり方で、仕掛品勘定の借方合計「266,875(千円)」は例題レベルの知識で解答できます。
 
そして問2の月末仕掛品原価「16,875(千円)」は差し引きしても解答できるので、この2つは正解していただきたいです。
 
私の想像ですが、ここはそれぞれ3点で6点の配点になると思っています。
ここが2つ取れるかどうかがかなり重要になってきます。
 
第1問の目標が6点で、第2問は6点です。
第2問の問2は8つとも全部やろうと思えばできます。
 
材料受入価格差異はM1・M2・M3という3つの材料受入価格差異を足せば良いです。
これは柴山式の例題にも類似問題があるので、ぜひ正解して欲しいです。
 
材料数量差異の「1,750」については、勘定連絡で少しご紹介しますが、これもやろうと思えばできます。
 
そして、労働賃率差異は「借方318(千円)」になります。
労働時間差異も例題レベルなので、全部できます。
 
さらにその下に製造間接費差異もあるのですが、全てが例題レベルの問題なので可能ならば問2は全部正解して欲しいです。
 
ここは全部で記入箇所が8つありますが、直接材料費と直接労務費の4か所で4点です。
そして、製造間接費が予算差異・変動費の能率差異・固定費の能率差異・不働能力差異の4つです。
 
ですので、第2問の問2は合計で8点です。
できれば8点のうち8点取りたいです。
 
そうすると、6点+6点+8点で20点取れる可能性が高い問題です。
1個か2個のイージーミスがあったとしても18点ぐらいは取れるでしょう。
 
それから、問3は問2の問題を基にしていくつか解答させる問題なので、少し難しいと思っています。
問3は3点ぐらいの配点がくるかもしれませんが、ここは仕方がないです。
 
22点満点で、2点ぐらい落として20点というのが目標ですが、さらに2点落として18点になったとしても勝負できますので、工業簿記はイージーミスのないようにしてください。
 
多くの問題は例題レベルの知識で解答できますので、あわよくば満点近くが狙えますが、少しミスをしても最低18点は取りたいです。
 
この工業簿記の全体像について柴山式総勘定元帳を使って勘定連絡の事例を作ったので、YouTubeの説明欄に記載しているリンクからアクセスして簿記1級の過去問集などと併せてご覧ください。
 
柴山式総勘定元帳は、十字を書いて、左上が資産です。
M1・M2・M3の材料は資産になります。
 
そこから、M1は2×23,000で46,000を払い出しして、それに対して仕掛品勘定に入る時は、着手が始点投入なので、M1が始点投入、M2が平均的投入で加工費と同じ数量になります。
 
それから、M3が終点投入なので完成品です。
M1が始点投入で、4,500個について1個あたり10,000です。
 
10千円×4,500=45,000という標準消費量に対して46,000を投入しているので、1,000が材料消費数量差異になります。
 
同じようにM2やM3も、それぞれM2の貸方149,000に対して仕掛品勘定の借方148,750というふうに少し変わってきます。
 
こういった形で、M1の材料消費量差異が1,000、M2が250、M3が500を全て足して1,750という答えになります。
 
これが左下の費用勘定のエリアです。
費用勘定は直接労務費・製造間接費・材料費の消費数量差異・材料受入価格差異が差異として出てきます。
 
あとは直接労務費差異280.5も出ますし、製造間接費差異11.0も費用勘定になります。
売上原価は左下の費用になります。
 
右上は買掛金で、M1は実際原価で57,500です。
この計算は実際購入単価2.3千円×実際購入25,000円で貸方57,500です。
 
これに対して、M1が借方50,000です。
この50,000と買掛金57,500で7,500の材料受入価格差異という関係も柴山式総勘定元帳で一覧できますので、過去問の検討のために見てください。
 
工業簿記の目標は20点で、最低でも18点は取りたいです。
原価計算は2つ問題があって、第1問が問6までありますが、問5までが1個2点×5問で10点、問6が1個1点×5か所で5点です。
 
ただし、問6は問5までの解答を前提としているので、連動しています。
とはいえ、問1~問5までは全て正解したいです。
 
問6は3つ正解が目標で3点取りたいです。
従って、第1問の目標は13点になります。
 
第1問の問1~問5までミスするとイージーミスになりますので、ぜひできて欲しいと思っています。
 
この計算過程のメモも作成しましたので、良ければ過去問を見る時の参考としてご覧ください。
 
小問3までのメモも書いてみました。
加重平均資本コストを出す過程などを書いています。
小問4と小問5についてもメモを書いてみました。
 
無料公開は第1問だけですが、第2問は柴山式の受講生向けに過去問集を出していますので、そちらの方で原価計算を含めた全ての解説をしています。
 
基本的には例題クラスの問題ですので、例題をしっかり復習していただければできると思っています。
原価計算の第1問の問1は「4%」が正解です。
 
計算過程としては、普通株の方は60%で、借入金の場合は法人税の計算上損金に入りますので、もちろん節税効果を考えますから、今回の税率は36%なので、支払利息から36%の税金を引いた形で加重平均資本コストを出します。
 
普通株は60%×0.06で、借入金は40%×0.015625×1-0.36という税率と60%の構成比率の普通株の資金調達です。
 
これは例題でもやっているので、このような例題でやったような計算のやり方をして4%が出ます。
 
このようにやれば、1つ1つの問題はそれ程難しくないので、第1問は問5までは全部正解して、問6は5つのうち3つできれば良いと思います。
 
第2問は全部で6つ解答があって、これはいわゆる時間価値を日常業務的意思決定なのですが、①と⑤が丸を付ける選択式の問題なので、数字を出す他の問題よりは解きやすいと思います。
 
①と⑤は1点で、②③④⑥は数字を計算するので各2点とすると、2点×4か所で8点、1点×2か所で2点、合計8+2で10点と考えます。
 
第1問が15点、第2問は10点と考えると、第1問でもし13点取れれば非常に有利です。
第2問で1個ぐらい間違えて8点だとしても21点ですし、2つ間違えても19点ぐらいは取れますので、やはり目標は20点前後に置きたいです。
 
そうすると、原価計算と工業簿記で低くても38点~40点前後で、目標は40点とすれば、今回の日商簿記検定1級は合格の可能性が非常に高まります。
 
工業簿記も20点は一応狙えますし、原価計算も20点を狙えないことはないです。
できるだけ2つ合わせて40点に近づけるのが理想ですし、得意な方であれば45点ぐらい取れてもおかしくない問題です。
 
ともあれ、工業簿記・原価計算で40点を取れるならば、商業簿記・会計学は30点以上で7割に達します。
 
やはり今回も商業簿記・会計学よりは工業簿記・原価計算の方が得点を積み上げやすい問題になっていて、工業簿記・原価計算はどちらも標準的で良問だと思います。
 
2017年6月以降の試験でも、こういった例題の基礎知識をベースとして過去問などの総合問題を一定量こなすことによって8割ぐらい得点を取れるような問題を標準レベルと考えたいと思っています。
 
今回の144回の問題は柴山式の71個の例題をきちんと回してスムーズにできるようになった上で、過去問を10回分程度マスターすることによって50点満点中40点以上は取れる試験だと思います。
 
そういった意味では非常にリーズナブルかつ標準的な問題だと思っています。
商業簿記・会計学の方は量が多くて少し取り組みにくかった分、工業簿記・原価計算で点数を稼ぎたいなと思いました。
 
ご参考になれば幸いです。
工業簿記の勘定連絡と原価計算の第1問に関する計算過程のメモはPDFでアップロードしていますので、アドレスをクリックしてご参考になさってください。
 
私はいつもあなたの日商簿記検定1級合格を心から応援しております。
ここまでご覧頂きまして誠にありがとうございました。

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