王子ホールディングスが営業利益50%アップ
王子ホールディングスの2015年9月期における第2四半期業績は、前年同期から約50%ほど増加して290億円程度となったようです。
日経新聞が報じました。
7月31日(第1四半期決算短信の発表時)における業績予想では、営業利益270億円の見込みでしたので、それより20億円上回ることになります。
売上高の従来予測は7500億円でしたが、実績もほぼそれと同じ水準の実績になりそうです。
ちなみに、前年の第2四半期売上高は6372億円です。
これに比べると約18%ほどの増収と予想されています。
いっぽう、前年の第2四半期営業利益は192億円ですが、これに対して当期は290億円ですから、100億円近くの増益で、約51%の増益ですね。
その背景として、海外事業の売上が前年同期比の約20%から30%近くへとシフトしたことが、今期の好調の大きな要因とみられています。
なお、王子ホールディングスの平成27年度第2四半期業績は、売上高が2割弱の増加で、営業利益が5割強の増加です。
売上よりも営業利益の方が、増加幅が大きいですね。
これは、わりとありうる現象で、固定費の存在が売上の伸び率より営業利益の伸び率を大きくします。
一般的な営業利益の計算式は、つぎのようになります。
営業利益=売上高-売上原価-販売費および一般管理費
ここで、小売業や卸売業ならば、売上原価はすべて「商品の仕入原価」であり、売上の増減に比例する費用すなわち「変動費」となります。
これが製造業ならば、売上原価のうち「材料費の仕入原価」と外注費などが売上の増減に比例する「変動費」です。
仮に、その他の従業員の基本給(労務費の大部分)や経費を固定費と考えると、メーカーの売上原価は、ざっくりと
「売上原価=変動費(材料費+外注費)+固定費(その他)」
のように分解できますね。
このように、製造業では、売上原価の中にも変動費と固定費が、混在していることになります。
つぎに、広告宣伝費や営業活動費である「販売費」は、発送費用や販売促進費などを「変動費」とし、そのほかを「固定費」と考えることがあります。
また、一般管理費は、本社費用等、売上の増減とは、あまり関係なく一定額発生することが通常なので、すべて固定費と考えて良いでしょう。
つまり、販売費及び一般管理費は、ざっと
変動販売費+固定販売費+固定一般管理費
と分けられます。
以上をふまえると、営業利益の計算式は、つぎのように変形できますね。
営業利益
=売上高-(変動売上原価+変動販売費)-固定販売費・一般管理費
ここで、たとえば、売上1000億円、変動売上原価と変動販売費の合計が750億円、固定販売費・一般管理費が150億円の会社があったとしましょう。
営業利益は1000-750-150=100億円です。
売上高に比例する変動費(変動売上原価+変動販売費)の比率は、750÷1000=75%ですね。
ここで、売上高が1000億円から1200億円へと、20%増加したとしましょう。
変動費は売上高に比例するので、750億円×1.2=900億円になりますね。
固定費は一定とします。
すると、20%の売上アップにともなう営業利益の額は、
1200-900-150=150億円!
つまり、営業利益の増加率は、(150-100)億円÷100億円=50%になるのですね~。
いかがですか?
売上高20%アップが、固定費の存在を通じて、営業利益50%アップになる!
こういうのを、管理会計の世界では「経営レバレッジ」といいます。
同じ営業利益なら、固定費が大きくなるほど、売上高に対する変動費の比率が小さくなります。
よって、「売上高-変動費」の幅が大きくなり、同じ売上高の伸びでも、固定費が大きい会社の方が、営業利益の伸び率はガツンと増えます。
なお、固定費がゼロの会社はないでしょうから、ほかにコスト悪化の要因がなければ、通常は売上の伸び幅以上に営業利益は、改善するのが道理なのですね。
王子ホールディングスの話に戻ると(ほかの要因も考えられるでしょうが)、 売上高が約2割アップに対し、営業利益が5割強アップという関係も、以上のような固定費の存在から、十分にありえる話だということが理解できますね。
(日経15*10*17*15)