福島工業が34億円を上限とした自社株買い
食品・業務用冷凍冷蔵庫で国内大手の福島工業が、9月7日に自社株買いを実施する旨、発表しました。
「自己株式の取得及び自己株式の公開買付けに関するお知らせ」
→ http://www.fukusima.co.jp/library/site_data/ir/info/pdf/jikokabu_tob.pdf
これによると、同日の取締役会において、自己株式の公開買付けを決議したそうです。
取得株数の上限は1,550,100株で発行済株式総数に対して7.02%、取得価額の総額は3,376,117,800円の上限となります。
買取価格は2,178円と、たとえば発表直前(9月4日)の終値2,464円と比べても11.6%ほど安い値段での取得となります。
この点につき、会社の発表内容のなかで、次のようにその理由を説明しています。
「…。また、当社株式の市場価格としては、適正な時価を算定するためには、市場価格が経済状況とその他様々な条件により日々変動しうるものであることから、一定期間の株価変動を考慮することが望ましいこと等を勘案し、当社が本公開買付けの実施を決定した取締役会決議日の前営業日(平成27年9月4日)の東京証券取引所市場第一部における当社株式の終値2,464円、同年9月4日までの過去1ヶ月間の当社株式の終値の単純平均値2,605円、同年9月4日までの過去3ヶ月間の当社株式の終値の単純平均値2,420円を参考にいたしました。
その上で、本公開買付けに応募せず当社株式を引き続き保有する株主の皆様の利益を尊重する観点から、資産の社外流出を可能な限り抑えるべく、市場価格に一定のディスカウントを行った価格により買い付けることが望ましいと判断いたしました。…」
(会社のIRニュースより一部引用)
なお、これらの株式の取得については、同社の筆頭株主である福島機器販売株式会社(新聞によると、創業家の資産管理会社)から主として取得するようですね。
自己株式を取得することによって、投資家にとっては重要な判断指標となるROE(自己資本利益率)が向上する、という効果も狙っていることがわかります。
ここで、おさらいですが、自己株式を取得すると、仕訳は次のようになります。
<自己株式100を取得した場合>
(借方)自己株式100 / (貸方)現金預金100
自己株式は、会社の資本(純資産の主要部分)のマイナス項目として取り扱われます。
出資の払込みの反対、すなわち出資の払い戻し、と実質的に同じであるという解釈ですね。
********バランスシート
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
***********|(負債)
***********|(純資産)
***********|**:
***********|自己株式△100
***********|**:
以上のように、純資産を減少させることから、ROEの計算式(純利益÷平均自己資本)における、分母の平均自己資本が少なくなるため、結果としてROEは大きくなり、会社の収益性が数字の上では良くなります。
こういった効果も、自己株式の取得には期待されるのですね。
ちなみに、7日の発表前後における福島工業の株価は、
9/4・・・2,464円
9/7・・・2,441円
9/8・・・2,420円
9/9・・・2,485円
と、いったん下がって、9/9にまた盛り返している動きです。
ちょっと微妙な感じですね。
自己株式の取得に関する企業発表は、ときとして株価に影響を与えます。
ROEの改善効果が、今後、福島工業の株価や業績に、どのような変化をもたらすか、興味があるところですね。
(日経15*9*8*15)