横浜ゴムが円安などで業績情報修正

横浜ゴムは、8月10日に連結業績(2016.3.31)の見通しを情報修正しました。

具体的な数値は次のとおりです。

(当初予測)2015年5月12日時点
売上高673,000百万円
営業利益64,000
経常利益54,500
最終利益36,000

(今回修正)2015年8月10日時点
売上高673,000百万円
営業利益64,000
経常利益59,500
最終利益39,000

営業利益までは同じですが、経常利益が50億円、最終利益が30億円の上方修正となっています。

その主な理由として、次のように説明されています。

「…2015年度通期の連結業績は、売上高と営業利益は2月公表値の6,730億円(前年同期比7.6%増)、640億円(同8.4%増)を据え置くが、経常利益と当期純利益は為替を中心とした営業外収支の改善に伴い上方修正する。経常利益は2月公表値に対して50億円プラスの595億円(同6.6%増)、当期純利益は30億円プラスの390億円(同3.7%減)を見込む。…」

URL→ http://www.yrc.co.jp/release/?id=2493&lang=ja
(2015年8月10日のニュースリリースより)
「為替を中心とした営業外収支の改善」と説明されています。

これは、どういった状況を意味しているのでしょうか。

日経新聞の説明を引用してみましょう。

「…経常利益の押し上げは円安の影響が大きい。通気の想定レートを1ドル=120円、1ユーロ=135円とそれぞれ5円年安に見直して為替差益が増える。…」

円安になると経常利益以下が増加する、という現象について、会計理論の面から説明してみましょう。

まず、損益計算書の構造は大まかに次のようになります。

(損益計算書)
1.売上高×××
2.売上原価×××(-)
ーーーーーーーーー
売上総利益×××
3.販売費及び一般管理費×××(-)
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
営業利益×××
4.営業外収益×××(+)←ココに為替差益が入る!
5.営業外費用×××(-)
ーーーーーーーーーーーーー
経常利益×××
6.特別利益×××(+)
7.特別損失×××(-)
ーーーーーーーーーーーーー
税引き前当期純利益×××
法人税、住民税及び事業税×××(-)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
当期純利益(最終利益)×××
==============

ここでは、たとえば手持ちの外貨建て資産1ドルにつき、為替相場が変動すれば、円建ての価値も変動するので、その分収益または費用が発生するのです。

特に輸出企業で大きいのは、輸出に伴う売上代金の未回収額すなわち「売掛金」などです。
たとえば、貿易により輸出額10,000ドルの売上代金を3ヶ月後に回収する予定で売掛金として持っていたとします。

輸出時の為替レートが110円だとすると、10,000ドル×110円=1,100,000万円の売上と同時に、売掛金という資産が発生します。

(借方) 売掛金 1,100,000 / (貸方) 売上 1,100,000

それから1ヶ月後に決算日が来たとしましょう。

まだ売掛金は回収されていないので、外貨ベースでは10,000ドル持っています。

しかし、決算日には為替レートが変動し、1ドル120円の円安になったとします。

1ドルを買うのに110円で済んでいたのが、決算日には120円と10円も多く必要になったので、相対的に円の価値が下がったと考え、10円の円安に
なった、という言い方をします(=ドルが高くなった)。

このとき、売掛金のような貨幣で回収する資産は、決算日のレートで評価し直しますので、10,000ドル×120円=1,200,000円に評価が変わります。

そこで、もとの1,100,000円との差額100,000円は、為替レートの変動による円建てベースの資産価値のアップとして、「為替差益」という勘定科目名を用いて仕訳します。

※決算における円安に伴う売掛金の評価アップの仕訳

(借方) 売掛金 100,000 / (貸方) 為替差益 100,000

この為替差益が、営業外収益として、経常利益以下の利益を増加させる要因となるのですね。

反対に、円高になれば、外貨建ての資産価値が下がり、営業外費用の為替差損と呼ばれるものになることもあります。

為替レートの変動が業績に与える影響についても、この機会に理解を深めておきたいですね。

(補足)
平成29年度以降の日商簿記2級では、この外貨建て取引に関する論点も、いずれ2級の商業簿記の試験範囲に入ることになることが予定されています。

(日経15*8*11*15)

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
商品に関するご質問・ご相談はこちら