ブラザー、のれん償却など買収コスト105億円
ブラザー工業は、8月3日の第一四半期決算発表で、2016年3月期の売上高予想を7600億円から8300億円に上方修正しましたが、営業利益580億円・経常利益当560億円・当期純利益355億円は当初と同じになりました。
→ http://www.brother.co.jp/investor/financial_info/index.htm
これらの業績予想の修正は、主にドミノ・プリンティング・サイエンス社(英国)の買収が影響しています。
→ http://download.brother.com/pub/jp/investor/accounts/tansin/2015q1/2015q1_domino.pdf
買収額は約1900億円と規模の大きなものです。
こういったこともあって、バランスシートの無形固定資産に計上するのれん残高が2015年3月期の38億円から1737億円へと、いっきに1700億円も増加しています。
これは、日本の会計ルールの下ではのれん償却費が大きくかさむ要因になります。
ちなみに、日本の会計ルールでは、のれんを20年以内の期間で定額法などの方法により規則的に償却して損益計算書の費用に計上します。
(計算例)
A社はB社を現金440億円で買収した。
買収時点におけるB社のバランスシートでは、総資産600億円-負債200億円=純資産400億円だった。
よって、買収額440億円-純資産400億円=のれんが40億円発生した。
(借方) 総資産 600億円 / (貸方) 負債 200億円
(借方) のれん 40億円 / (貸方) 現金 440億円
決算日になり、のれんを20年で定額償却することにした。20年後の残存価額は0円である。
(借方) のれん償却 2億円 / (貸方) のれん 2億円
このように、のれんを毎期費用として計上します。
ちなみに、のれん償却額は、損益計算書では、販売費及び一般管理費に含めて表示されます。
ここで、次のような疑問をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんね。
「買収って、特殊な取引だから、営業利益の計算要素である販売費および一般管理費でいいのかな~?せめて営業外費用じゃないの?」
たしかに、買収自体はめったにない本業以外の取引と考えられなくもないです。
しかし、いっぽうでは、企業を丸ごと買うという行為は、買収先の事業を一体として買い取り、事業の拡張や新事業への進出を目指した設備投資の発展形と考えることもできます。
とするならば、設備+人+ノウハウの一体型投資ととらえ、固定資産の減価償却に似た性質を持っているじゃないか、ということで、固定資産の減価償却と同じ発想で、のれんの取得原価を償却して各期の費用として配分することになっているのですね。
なお、ブラザー工業はIFRS(国際会計基準)に移行する予定だとのことですので、そうなると、国際ルールではのれんを償却しないので、この部分の負担はいずれなくなります。
のれん償却の要否は、日本の会計ルールと国際ルールの違いとして、有名な論点です。
ブラザー工業の業績予想とのれん償却に関するお話しでした。
(日経15*8*4*14)