公的年金運用益・運用利回りが過去最高
公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2014年度の運用益が前年比49.6%の増加となり、過去最高の15兆2922億円だったと発表しました。
運用利回りは12.27%という異常ともいえる高さで、こちらも過去最高だそうです。
これは私の経験則ですが、一般に、金融商品の利回りが8%を超えると、高リスクの可能性が高まると思います。
もちろん、GPIFの単年度の運用利回りが12%を超えるというのは現実問題としてあり得ますし、ここ2~3年の日経平均の動きを見れば、想定の範囲ともいえる数値ではあります。
2014年度の国内株への投資額は3兆9185億円に上ったそうです。
これだけの資金が株式市場に流れると、さすがに日経平均などにも上昇圧力がかかって、株価がアップしやすくなるでしょう。
公的年金といえば、老後の年金保障ということですが、企業の立場で言えば退職年金を連想します。
企業のバランスシート上では、負債の部に計上される退職給付引当金(連結決算上は退職給付に係る負債)が、会社が負担するべき退職給付の未払い債務というイメージですね。
*******バランスシート
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(流動資産)****|(流動負債)
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(固定資産)****|(固定負債)
**********|社債
**********|長期借入金
**********|退職給付引当金
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この退職給付引当金は、シンプルに考えると次のような計算式により計上されます。
退職給付引当金=「退職給付債務」-「年金資産」±「一定の調整」
退職給付債務とは、決算日時点で在籍している従業員が将来退職するときに支払うべき退職金を見積もって、決算日までに勤務期間が経過した部分を未払い債務として計算したものです。
この退職給付債務から、外部の年金基金という運用組織に会社から掛け金を拠出し積み立てた額を年金資産として、決算日時点の時価で評価して、その額を退職給付債務から控除した額が、基本的な会社負担分(退職給付引当金)となります。
年金資産は、従業員の退職金の支払い原資となります。
そのあと、一定の細かい調整をして退職給付引当金(個別決算上)になります。
今回の時事テーマとなっている公的年金運用益は、年金資産の増加を意味しますから、これが企業の立場ならば、退職給付引当金の削減効果につながります。
企業の決算において、年金資産の利回りが高まれば、退職給付引当金の額が減るので、財務体質が強固になりますね。
株式市場の好不調が、年金財政や企業の退職給付に係るバランスシート表示も影響を及ぼすのだ、ということを頭の片隅に入れて置いておくと良いでしょう。
(日経15*7*11*1)