精算表の作成 【知識ゼロからの会計学入門020】

知識ゼロからの会計学入門、第20回は「精算表の作成」についてです。
いよいよ簿記の一巡の最後になります。

前回は繰越試算表を作りましたが、今度は決算整理前の残高試算表から決算整理仕訳を経て、最後に貸借対照表と損益計算書を作るという、大きな流れを俯瞰する表として精算表を作ります。

これは日商簿記3級の第五問でよく出ている総合問題で、決算の全体像を一覧する大事な表です。

この表は任意で作成しますが、ほとんどの会計ソフトでは自動的に作れるようになっていると思います。

精算表とは何かというと、勘定科目が左側に縦一列にあり、左から「試算表」「修正記入(決算仕訳)」「損益計算書」「貸借対照表」という4つのコラムがあります。

それぞれのコラムに対して借方と貸方がありますので、2列×4つのコラムで8桁あることから、「8桁精算表」といって、これが日商簿記検定の第五問でよく出ます。

なかには決算整理後の試算表から始まって、修正記入を飛ばして損益計算書と貸借対照表に書く「6桁精算表」というものもあります。

あるいは、簿記検定では出づらいですが、一番桁数が多いケースは、決算整理前の試算表から始まって、修正記入があって、決算整理後の残高試算表を作ってから損益計算書・貸借対照表というように、もう1つコラムを増やす「10桁精算表」というものもあります。

「試算表」と書いてありますが、これは決算整理前試算表のことです。
現金が借方に4,450、車両運搬具は借方に150、借入金は2,000、資本金は1,000、繰越利益は0、売上は4,000、仕入が2,400で、借方と貸方の合計はそれぞれ7,000です。

次に修正記入です。
車両運搬具について決算整理仕訳を行いました。

耐用年数6年で残存価額が0なので、150÷6=25万円ずつ毎年価値が減っていきます。
このように毎年一定額ずつ価値が減る考え方を「定額法」といいました。

今回は車両運搬具という勘定科目を直接減らすことで評価を下げますが、これを「直接法」といいました。

仕訳は(借方)減価償却費25 (貸方)車両運搬具25です。
精算表の修正記入欄には車両運搬具の貸方に25、減価償却費の借方に25という仕訳を表現します。

借方と貸方はそれぞれ25になります。
やはり、必ず借方と貸方の合計は一致します。

次に損益計算書です。
損益計算書に記入するものは収益と費用です。
今回の取引の中で収益に該当するものは売上です。

売上4,000が損益計算書の貸方に写します。
費用としては、仕入2,400をそのまま借方に写します。

減価償却費については、スタートは0ですが、試算表0+修正記入25で借方25になります。
そして、すべてを損益計算書に写し終わったら、貸方の合計を出します。

貸方は売上4,000だけなので、これがそのまま合計となります。
借方は仕入と減価償却費で2,425になります。

比較すると借方よりも貸方のほうが大きいので、大きいほうの金額を先に書きます。
そしてもう一方の合計も同じ金額を書きます。
4,000と2,425の差し引き1,575を穴埋めして、これを当期純利益と考えます。

今回は貸方(収益)のほうが大きいから当期純利益となりますが、借方(費用)のほうが大きい場合は、儲かっていないことになるので当期純損失となります。
これで借方と貸方の数字が一致していることになります。

最後に貸借対照表です。
資産、負債、純資産に属するものがここに入ります。
まず、現金4,450をそのまま写します。

問題は車両運搬具ですが、150で始まって修正記入で25減らしていますので、150-25で125となります。

借入金は負債なので貸借対照表の貸方にそのまま写します。
資本金1,000もそのまま写します。
繰越利益は修正記入がないので0のまま写してしまっていいです。

そして、借方合計を出してみると、現金4,450+車両運搬具125=4,575となります。
貸方は、借入金2,000と資本金1,000を合わせて3,000になりますが、借方と貸方を比較すると借方のほうが大きいので、大きい金額を合計に写します。

そして貸方にも同じ金額を書きます。
貸借平均の原理は必ず貫かれます。

4,575と3,000の差し引きは1,575なので、当期純利益が貸方に1,575入ります。
面白いことに、当期純利益は損益計算書では借方に入りましたが、貸借対照表では貸方に入ります。

貸借が逆に同じ数字になれば、記入と精算表の作成は間違いないことになります。
精算表の問題は簿記3級ならば第五問で出ますし、簿記2級ならば第三問で出ることがあります。

決算手続の総合問題として精算表の作成について問われることが多いので、この機会に覚えてください。
実務でも知っておくとすごく役に立ちます。

それから、上級簿記で学習する連結決算でも、精算表の考え方を基本にすることが多いので、色々な点から精算表は重要です。

ぜひこの機会にマスターしてください。
以上が精算表のお話です。

ここまでは簿記の入門的な手続きの話で、数字がたくさん出てきましたが、次回からは少し会計理論的な話をします。

次回は「企業の存在意義と企業会計」というお話をしますが、これは一般の会計テキストや会計学の入門ではありません。

しかし、「そもそも企業って何?」というところから考えることによって、今後のあなたの会計学や財務会計論を考えるときに役に立ちますし、あなたの会計に関する知識や哲学や物の考え方が深掘りできます。

それではこれで今回は終わりにします。
お疲れさまでした。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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