フランス、所得税率75%案を軌道修正?(日経13*1*10*7)
他人事…と笑っていられないお話です。
日本でも所得税の最高税率アップが当然の雰囲気になっていますから。
フランスのオランド政権は、所得税の最高税率をなんと75%に大幅に引きあげる増税案を軌道修正するかたちになりそうだということです。
17年ぶりの社会党政権として昨年5月に発足したオランド政権は、富裕層から低所得者への所得再配分を掲げており、2013年から2年間の時限措置で年収1000万ユーロ(約1億1500万円)を超える個人の所得税率を、現行の約40%から75%まで一気に引き上げる案をしめしました。
経済学の基本的な考え方として、おおまかにつぎのようなものがあります。
(1)規制を加えない自由競争が経済効率上望ましい。
(2)富の総量が一定のときに、富の再配分を政府が行うことで、経済効率が良い状態のまま格差を是正できる。
ともあれ、経済効率性の向上と資源配分の公正性は、なかなか相容れないものがあり、そのときどきの政治ニュースや経済ニュースが、経済効率を重視した話なのか、あるいは所得分配を重視した話なのかを意識するだけでも、理解しやすくなりますね。
今回のとんでもない税率アップの話は、あきらかに(2)の所得再配分をテーマとしたものです。
極端な累進課税を評して、「成功者や才能ある人を罰する所業である」といわれることがあります。
「一生懸命努力して、やっと競争に勝ったと思ったら、とんでもない重税かよ。やってらんねーぜ!」みたいな気分でしょうか。
なかには、生まれながらにして資産家の財産を継ぐ人もいたりして、なかなか一筋縄ではいかない問題です…
ともあれ、最高税率75%はすさまじいですね。
年棒2億円とかのプロ野球選手は、対象となる所得部分の4分の3が税金として持って行かれるとしたら…
なお、夫婦二人が両方とも100万ユーロをわずかでも下回った場合と、夫婦のどちらかが100万ユーロを上回った場合とで、税負担に不公平が出る恐れもあるということで、憲法違反になるのでは、という点でも問題になっているそうです。
ちなみに、ウィキペディアで見た話ですが、一般消費税(特定の物品に限定しない消費税)をはじめたのは1954年のフランスだそうです。
いちはやく財源確保のための一般消費税を導入したフランスが、けっきょくはそれでも財政が苦しくて富裕層への大幅増税に踏み切ろうとしていた、というのはなんとも言えない話です。
現在、フランスの一般消費税の標準税率は19.6%ですね。
20%近い消費税をとっていても、所得税率を最高75%に上げなければならない状況になるかもしれない…
消費税率20%くらいの国で財政がうまくいっている国と、うまくいっていない国の両方があると思いますが、その違いはなんでしょうか。
ちなみに、消費税をアップすれば、高い確率で景気の後退が見込まれます。
そのさい、「庶民の」社会保障の充実とワンセットにしないと、けっきょくは庶民の生活は悪化するわ富裕層は増税で海外逃避するわ、という暗い未来予想図が描けてしまったりします。
…そういえば、20世紀初頭まではわりと前面に出ていた植民地政策で豊かさを実現していた先進国って、いまの財政はどうなんでしょう。
軍事力の増強やその他の歳費増大で、もはや内需からの収入だけでやっていけなくなっているのかも。
あるいはいったん上がってしまった生活レベルはそうそう下げられない?
今からいうのも気が早いかも知れませんが、22世紀は「内需回帰の経済」が強くなったりしてね。
そうみると、日本は意外に強いと思うのですが。
「資源がない」というかもしれませんが、海洋国の日本は、意外に海底・海上にいろんな資源をもってたりして…。
「外へ」の経済発展は、100年後、時代遅れになっているのでは?なんていう気がすこーししています。
外への発展は、どうしても国家運営の歳費膨張にもつながります。
これからは、足元の内需をもう一度育て、歳費を効率よく削りながら静かな成長を目指すのが先端を行く思想なのではないでしょうか。
「外にばかり目を奪われている」と、足元がおろそかになりやすいですよ。
個人的には、「柴山会計ラーニング」の社内公用語を英語にするつもりはありません(笑)。
日本(日本語)には日本(日本語)の良さがありますしね。