大王、連結縮小と元役員貸付の貸倒引当で赤字(日経12*2*15*13)

日経新聞朝刊は、2月15日13面と2月16日11面の2日連続で、大王製紙の子会社数減少と連結対象の縮小の問題を取り上げています。

一企業が、超大手を除いて日経に2日連続で取り上げられる、というのはなかなか無いことで、これは世間に与える印象がよほど強い、ということを意味しています。

日経の取り上げ方で、そのニュースの意義が想像できる、というのも面白い見方ですね。

さて、このもとになる一つの企業リリースが、次のサイトです。

「業績予想の修正に関するお知らせ(大王製紙、2012.2.14)
⇒ http://www.daio-paper.co.jp/news/2012/pdf/n240214a.pdf

まずは、業績予想の修正が結論としてあります。

【大王製紙の平成24年3月期の業績予想】

(前回発表予想)
1 売上高 4250億円
2 営業利益 158億円
3 経常利益 80億円
4 当期純利益 5億円

(今回発表予想)
1 売上高 4040億円
2 営業利益 100億円
3 経常利益 35億円
4 当期純利益 ▲25億円

以上のようになります。

この間、連結子会社数が37社から、いったん8社に急減し、すこし増えて
19社になったそうです。

いずれにせよ、当初の半分程度の連結子会社数になった、ということですね。

これら減少分の多くが前役員である創業家の保有比率が高いものです。

連結する子会社数が減れば、貸借対照表の資産・負債はもちろん、損益計算書の売上高や利益も減少します(減少する子会社が儲かっている場合は、利益が減少します…)。

この点、子会社が37社から19社に減ったことによる数値の影響をちょっと抜き出してみましょう。

(今回発表予想と前回発表予想の増減(差額))

1売上高差額   ▲210億円   (対連結比▲4.9%)
2営業利益差額  ▲58億円    (対連結比▲36.7%)
3経常利益差額  ▲45億円    (対連結比▲56.25%)
4当期純利益差額 ▲30億円    (赤字転落!対連結比▲600%!!)

…すごいマイナス影響っぷりですね。

当期純利益が赤字転落になったのも罪深いですが、企業の総合的な実力を判断する重要指標である経常利益がなんと56%も減少したのには驚かされます。

ちょっとうがった見方をすると、創業家肝いりの関係会社で、いかに利益を吸い上げていたかがよくわかる構図と言えなくもないですね。

売上の減少が4.9%とそれほどでもないのに、営業利益の減少が36%、経常利益にいたっては56%ですから…

このように、稼ぎ頭となっていた子会社が連結決算対象から外れた時の業績インパクトは大きいです。

もちろんこれは、株価にも影響するでしょう。

連結企業集団の管理能力が、これからも多くの上場企業で問われるようになるでしょう。

また、もうひとつ、新聞で取り上げられていた要因として、前会長への巨額貸付にともなう貸倒引当金(不良債権見積り)の費用も、追加で計上されることが業績の下押しをもたらします。

う~ん、以前の殿はそうとう会社にたくさんの置き土産をもたらしているなあ…、という印象が強くなった時事問題ですね。

人の振り見てわがふり直せ、とはよく言ったものです。良い教材として、わが身を律しましょう。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
商品に関するご質問・ご相談はこちら