サービス業における収益と原価の計上(役務収益、役務原価)

今回は、平成28年度の改正論点から、サービス業における役務収益と役務原価の計上についてご紹介したいと思います。

 

従来は商品を仕入れて売り上げるという商品販売形態が商業簿記で出題されていました。

ですので、総勘定元帳では「売上」と「仕入」、損益計算書では「売上高」と「売上原価」で表すという形でした。

しかし、昨今のサービス業の多様化に合わせて、商品販売業以外の業種の収益と費用の計上についても試験対象として明示されました。

 

これがサービス業に関するもので、サービス業の売上に相当するものは「役務収益」で、売上原価に相当するものを「役務原価」と言うようになりました。

 

役務収益と役務原価については商工会議所などにも取引例が出ています。

事例をみていきます。

 

①A建築事務所は、給料100,000円と交通費20,000円を現金で支払った。

②上記給料のうち40,000円と交通費6,000円はB社から請け負った設計依頼に係るものだった。

③B社依頼の設計図が完成し、納品した。代金80,000円は当座預金口座に振り込まれた。

以上です。

 

①の仕訳はすぐに分かると思いますが、(借方)給料100,000 交通費20,000 (貸方)現金120,000となります。

 

②について、給料と交通費は一般的な費用ですが、特定の案件(個別原価計算に相当するもの)に関するものは、費用からは切り分けて役務原価に計上します。

 

たとえば、給料100,000円のうち40,000円はある特定のお客さんB社のために行ったものだとすると、この40,000円は役務原価という費用に区分します。

その過程で未完成の段階では「仕掛品」という勘定科目を使います。

 

工業簿記の学習をされている方は分かると思いますが、費用のうち未完成の製品にかかるものは、いったん「仕掛品」という棚卸資産に振り替えます。

 

つまり、事務員などの給料として10万を払っていますが、そのうち4万は専らB社の案件にかかったものなので、この4万円は給料から仕掛品勘定へ振り替えます。

特定の案件に係った未完成の原価を「仕掛品」と言います。

 

交通費についても、20,000のうち6,000円もB社のための調査にかかった費用なので、6,000を仕掛品勘定へ振り替えます。

 

仕訳は(借方)仕掛品46,000 (貸方)給料40,000 交通費6,000です。

この結果、一般的な給料は60,000円、交通費は14,000円となります。

 

このように費用がいったんマイナスになることがありますが、これは仕掛品勘定に置き換えたからです。

これは簿記2級の工業簿記に繋がる考え方です。

 

そして、サービスの提供が完了して代金80,000円が当座預金に振り込まれた場合の仕訳ですが、(借方)役務原価46,000 当座預金80,000 (貸方)仕掛品46,000 役務収益80,000となります。

 

「役務原価」というのは「売上」に相当するものです。

実務では「売上」で処理している場合もありますが、正確には「役務収益」となります。

ですので、簿記検定2級では「役務収益」が正解になります。

 

そして「役務収益」というのは「売上原価」に相当するものです。

役務収益80,000円と役務原価46,000円の差額34,000円が売上総利益(粗利益)となります。

 

このように、仕掛品勘定を未完成の案件の集計勘定として使います。

これは資産なので、棚卸資産の1つです。

ぜひ参考にしてください。

 

簿記2級の内容も経済環境の変化に合わせて少しずつ改訂・改善をして、時代にキャッチアップしています。

簿記2級の勉強は実務にも使えるものですので、ぜひ参考になさってください。

 

私はいつもあなたの日商簿記検定2級の合格と簿記学習を心から応援しております。

ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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