駅前の立ち食いそば屋さんを、いくらで買収しますか?(のれんの話)

今回は簿記2級・1級レベルの話をしたいと思います。

あるビジネスをM&Aをして買収したときに、「のれん」という無形固定資産が発生します。

新聞では「のれん代」などと言われることがあります。

貸借対照表にも「のれん」とひらがな3文字で表記されます。

 

日本の会計基準では、20年以内の適切な期間で償却して費用を計上します。

のれんとは簡単に言うと、そのビジネスを買収したときに払ったお金と買収したビジネスの資産の差額です。

 

もっと言うと、買収したときのビジネスそのものの財産の額よりも高くお金を払うのですが、その高く払った差額のことをのれんと言います。

 

では、なぜそのようなことが起こるのかということを簡単に、駅前の立ち食いそば屋さんの事例で考えてみましょう。

 

駅前の立ち食いそば屋さんは立地条件さえ良ければかなり儲かる商売です。

1杯400円ぐらいで、10分から15分もしたら人が入れ替わりますので、回転が早いです。

 

朝の通勤時間帯はすごく並んでいます。

しかも1Kの狭いマンションぐらいの広さです。

 

15分で1回転したとしても1時間に4回転もします。

10人入るお店だとしたら、1時間で40人も捌けることになります。

 

1杯400円だとしたら1時間で16,000円売上があります。

原価はおそらく3割ぐらいなので、7割ぐらいは粗利になるはずですので、立地などの条件が揃えば、立ち食いそば屋というのは良い商売なのです。

 

たとえば、そのお店が1,000万の設備と財産を持っていたとして、借金はゼロとします。

普通は「財産が1,000万あるのだから1,000万で買えばいいのではないか」と思うかもしれません。

 

たとえば、立ち食いそば屋さんを大手のチェーン店が買収する場合を考えてみます。

駅前で3年ぐらいやっていて、1日10万の売上があって、月間250万、年間3,000万売って、300万の利益をもたらすような立ち食いそば屋あったとします。

 

そのお店は1,000万の設備を持っていて借金がゼロの場合、現物財産自体は1,000万あります。

 

そこに大手の担当者が来て「あなたの店を売ってください」と言った場合、いくらで売りますか?

 

1,000万と言われて1,000万で売りますか?

おそらく売りません。

 

なぜかというと、そのお店をコツコツとやっていれば1年で300万、3年5年とやればさらにお金が入るのです。

 

そうすると、「1,000万では売りたくないな」と思うでしょう。

そこで大手の担当者は「では1,500万で買いましょう」と言ってくれたので、「1,500万円ならいいですよ」となります。

 

これがビジネスなのです。

相手は「2,000万」と言うかもしれませんし、値切って「800万」と言うかもしれませんが、財産は1,000万あります。

 

現物財産以外にも「秘伝のタレ」とか「秘伝のレシピ」「ノウハウ」「従業員のレベルが高い」「地元の信用がある」など、見えない価値もプラスして見積もって、1,500万で売ることが決まりました。

 

ノウハウなどもすべて相手へ売り渡しますが、このノウハウの部分がのれんです。

では、買った側である大手のチェーン店はどうなるかというと、仕訳で表すと貸方が現金1,500万となって、借方は固定資産1,000万とのれん500万になります。

 

つまり、現物財産で受け入れた1,000万に対して払ったお金が1,500万ですが、差額の500万はのれんです。

 

受け入れた現物財産などよりも高く払った分がのれんです。

今回は借入がないという前提でしたが、借入があれば現物財産などの資産の評価から借入を引いた純資産を超えた分をのれんと言います。

 

これを会計の世界では「超過収益力」と言います。

現物財産以外の、目には見えないノウハウなどのプレミアム部分をのれんと言うのです。

 

日経新聞などにもよく出てきますし、のれんの評価は大事なものです。

ぜひ参考になさってください。

 

私はいつもあなたの日商簿記検定2級・1級の合格を心から応援しています。

ここまでご覧いただきまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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