「のれん」のバランスシート計上額が24兆円に

2015年9月時点における、のれんの残高が約24兆円となり、2014年度と比べて5%増えたそうです。

これは、7年連続で最高とのこと。

海外企業の買収が相次いだため、のれんの計上額が増加しています。

のれんとは、企業が合併や買収(M&A)などで他の企業の全部または一部を自社グループに取り込んださいに、その対価と受け入れた事業の財産価値との差額をいいます。

(例)
A社は、吸収合併によりB社を統合した。

合併時点におけるB社の資産は600億円、負債は200億円であり、時価ベースの純資産は400億円だが、これに対してA社は550億円の自社株を発行した。

増加する自己資本はすべて「資本金」とする。

B社から受け入れる資産を「資産(B)」、B社から受け入れる負債を「負債(B)」とする。

以上を踏まえると、A社の吸収合併に際して生じるバランスシートの変動は次のとおりです。

*****バランスシート
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
資産(B)600|負債(B)200
のれん**150|資本金**550

時価純資産400億円のビジネスを受け入れて、それに対して400億円ではなく、さらに高額の550億円を自社の発行株式という形で支払ったのですから、150億円ほど対価の額が大きいです。

これは、バランスシートの表面には現れないB社の見えない価値、つまり信用力・ブランド・ノウハウ・顧客リスト・技術・立地条件・歴史・将来性などの無形資産を評価して割高で取得した分なのですね。

こういった割高で評価する部分を、会計の世界では「超過収益力の源泉」などと表現することがあります。

この超過収益力の部分を、簿記のルールでは「のれん」という勘定科目で会計処理し、バランスシートの無形固定資産として表示するのです。

参考までに仕訳例を示してみましょう。

(借方)
資産(B)600
のれん**150

(貸方)
負債(B)200
資本金**550

ここで生じたのれんは、現在の日本の会計基準では、20年以内の効果が及ぶ期間に渡って、残存価額を0とする定額法などで償却していきます。

国際会計ルールでは、のれんは償却しないので、この点、日本の会計処理とは大きく異なり、従来から問題点として指摘されているところです。

こののれん、毎期、買収した事業の将来収益を見直し、将来収益が減少して、一定の条件に該当してしまうと、いわゆる「減損損失」を計上する可能性があります。

この点は、設備などの有形固定資産と同じですね。

なお、新聞によりますと、主な企業ののれんと自己資本に対する比率がでていました。

たとえば、サントリー食品インターナショナル(サントリBF:Suntory Beverage & Food Limited)は、のれん残高4654億円で、自己資本に対するのれんの比率は、なんと79.6%です。

おどろきの高さです。

※計算過程のチェック(2015/9/30)
のれん465,408÷自己資本584,581百万円=79.61%

(参考)サントリー食品インターナショナル(SBF)の決算短信
http://www.suntory.co.jp/softdrink/ir/earnings/pdf/20151104_tanshin.pdf

現在、会計不正問題で揺れている東芝もすごいですよ。

のれん残高6499億円で自己資本に対する比率は63.6%。

自己資本の6割以上がのれんですから、実体のない資産が、いかに大きいかわかります。

このほか、のれんの自己資本に対する占有率が6割前後以上の会社として、電通・楽天・JTがあります。

M&Aへの積極的な姿勢が見て取れますよね。

今後は、ますます海外企業の買収を筆頭に、M&Aが増えていくことでしょう。

企業の成長戦略は、まさに新しいステージに移りつつある、といえそうです。

(日経16*1*23*17)

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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