貸借対照表完全性の原則 【知識ゼロからの会計学入門023】

知識ゼロからの会計学入門、第23回「貸借対照表完全性の原則」というテーマでお話します。

前回の復習ですが、貸借対照表とは「企業の一時点(決算日など)における、資産・負債・資本(純資産)の残高の状態を表示する財務諸表のひとつ」です。

貸借対照表は「ストック」を表しますが、これに対して「フロー」は損益計算書で表します。

貸借対照表には「資産の部」「負債の部」「純資産の部」という3つの区分で表示しますが、会社が所有するすべての資産・負債は貸借対照表上に漏れなく記載するという「貸借対照表完全性の原則」があります。

そして、それとコンセプトは似ていますが、資産・負債・純資産の各項目は総額で表示するという、金額に関する原則があります。今回はこれらを、具体例を用いながら詳しく見ていきます。

これはとても大事なことで、私たち公認会計士が会計監査をするときにも気をつけていることです。

簡単に言うと、「都合の悪い資産・負債を除外しないように」ということです。
不良債権や不良資産、見せたくない借金なども除外せずきちんと記載しなければなりません。

では、貸借対照表を見ていきましょう。
流動資産というものがありますが、これは回転が早いものです。
現金預金は100万円ありますが、これはそのままです。

売掛金とは「ツケ」で、商品は売ったけれども売上代金が未回収になっているもの(債権)です。
逆に、未払いの仕入代金を買掛金と言います。

棚卸資産というのは、購入した在庫で、まだ倉庫に眠っていて売れていないものです。
今回は棚卸資産について考えてみますが、300万の在庫すべてが売れ筋だとは限りません。
なかには見込み違いで売れ残ってしまうような在庫もあります。

例えば、期末の決算で調査をしてみたら売れ残った商品在庫300万のうち、180万は翌期にすぐ売れる健全在庫だけれども、残りの120は半年以上も置いてあって埃を被っているようなものだったとします。

その場合、銀行、会計士、株主などには不良在庫はできれば見せたくありません。
「不良在庫入っていませんか?」と突っ込まれると嫌なので、外したくなってしまうのですが、それをしてはいけないのが「貸借対照表完全性の原則」です。

売掛金も同じで、200万円のうちの50万円はなかなかお金を払ってくれないようなお客さんで、できればこの部分の金額は外したいと思っても、それはできないということです。
良いものも悪いものも、正直に貸借対照表に入れるということです。

「明瞭性の原則」という言葉についてはいずれまた紹介しますが、会計の心構えとして、わかりやすく表示するということです。

個人的には1番大事なもののひとつだと思っていますが、利害関係者というのをこのシリーズの最初に学習しましたが、いわゆるステークホルダーで、株主・債権者・税務署などの利害関係者に会社の財産の状況に関する判断を誤らせてはまずいです。

明瞭性の原則というのはとても大事で、財務諸表を利用する利害関係者などが、この財務諸表を見て誤った判断をしないように明瞭に表示するということです。

「明瞭表示」あるいは「明瞭性の原則」という心構えを具体化したものとして「貸借対照表完全性の原則」があります。

この原則を守らずに、都合の悪いものを抜いてしまうと判断を誤らせることになってしまいます。

不良債権や不良在庫などもきちんと表示して、正しい判断を仰ぐというのが、貸借対照表完全性の原則です。

そして「総額主義」の原則についてです。
これは、資産・負債はすべて総額表示しなければならないとする原則です。

例えば、債権と債務の一部を相殺するなどして純額表示することは原則として許されません。

例えば、同じ会社に対して商品を売ったり、逆に商品を仕入れたりすることがありますが、その場合、その会社に対する売掛金300万があると同時に買掛金80万あるとしたら、「相殺して売掛金220万と表示すれば良いではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、それが出来ないということです。

どちらも両建てで表示することを「総額主義」といいます。
他にも、銀行に定期預金を300万預けている一方で80万の融資を受けている場合、差し引きして預金を正味で220万するのはおかしいです。

定期預金の金額は明らかに300万なのだから、定期預金という個別の科目の財産の表示は220ではありません。

借入が80あるということは担保を押さえられているかもしれないから、それに関連する付帯情報が絶対に出てくるから、借入を0にしたらまずいのです。

法律的には問題なくても、会計上は利害関係者の判断を誤らせてしまいます。
借金が0と表示してしまうと「無借金経営なのか」と勘違いさせてしまいます。

総額主義の原則というのは、似たような債権・債務を相殺して純額表示してしまったら、資産の実体がわからないですし、総資産の金額も間違えてしまいますし、会社の規模が分からなくなってしまいます。

例えば、借金が1,000万あって預金が1,100万あった場合、相殺すると、借入が0で預金が100万になります。
預金が100万で借入が0というのは明らかにおかしいです。

本来なら1,000万の資産の会社が100万円が総資産であると表示してしまうと判断を間違えてしまいます。
1,100万の会社と100万の会社は全然イメージが違ってきます。

このように、利害関係者の判断を誤らせてしまうような表示になってしまうので、相殺してはいけないのです。

そうやって考えると、「貸借対照表完全性の原則」と「総額主義の原則」は違うということが分かります。

「貸借対照表完全性の原則」は企業が保有している資産・負債はもれなく載せるということで、そこからさらに関連しそうな資産と負債を相殺して純額して表示することは会社の規模や勘定科目に対する理解を誤らせる危険性があるので「明瞭表示の原則」の観点からNGだと考えてください。

こういった知識を踏まえて決算書の分析をしていただくと、会計に対する興味がさらに湧いてくるかと思います。
以上が今回のお話でした。

次回は「流動固定分類」についてお話したいと思います。
ここまでお疲れさまでした。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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