繰越試算表の作成 【知識ゼロからの会計学入門019】

知識ゼロからの会計学入門、第19回は繰越試算表の作成と帳簿の締切について勉強していきたいと思います。

決算は通常2か月以内に行われますが、決算手続の前半が決算整理で後半は決算振替です。
決算振替のなかでも前回は損益振替と資本振替が終わり、すべての数字が確定されました。
いよいよ来年への繰越です。

資産、負債、純資産というものは残高が残っているので、これを翌期に繰り越す手続きを行います。

収益と費用は損益振替によって残高を0にしているため、繰り越す必要はありません。
帳簿の締切には繰越試算表の作成も含まれています(英米式決算法)。

前回は、売上、仕入、減価償却をそれぞれ0にして損益勘定に振り替えました。
この時点で残っているのは、現金が4,450、車両運搬具が125、借入金が2,000、資本金が1,000、損益勘定から振り替えられた繰越利益剰余金が1,575です。

これらの状況を踏まえて繰越試算表を作ってみましょう。
繰越試算表のTの字を書いて、借方は現金4,450、車両運搬具125で借方合計4,575です。
貸方は借入金2,000、資本金が1,000、繰越利益剰余金が1,575で貸方合計4,575です。

借方と貸方は4,575で一致していますが、これを「貸借平均の原理」ということは既に学習しました。

資産の4,575から負債の2,000を引いた2,575が純資産になりますが、これを「純資産等式(資本等式)」ということも学習しました。

資本金1,000と繰越利益剰余金1,575の合計がその会社の所有者(株主など)の取り分になるのです。

そして「貸借対照表等式」というのも勉強しました。
つまり資産4,575=負債2,000+純資産2,575ということです。
資産、負債、純資産の関係は2つの視点で見ることができます。

株主の視点ならば資産-負債=株主の取り分(純資産)となります。
経営者の視点ならば他人資本(負債)+自己資本(純資産)=資産となります。

このように繰越試算表を作成して来年に繰り越します。
貸借の金額は一致しているので、これまでの帳簿記入はすべて正しいということが言えます。

これを「複式簿記の自動検証機能」ということも以前学習しました。
1つの取引を借方と貸方という2つの要素に分けて記入する方法を「複式簿記」といいます。

この結果、どの段階で見ても必ず借方合計と貸方合計は同じ金額になります。
貸借平均の原理がきちんと維持されていることで記帳の正確性が一応保証されているということです。

結局、繰越試算表というのは貸借対照表の元資料なのです。
繰越試算表を清書して外部公表用に書き直したものが貸借対照表なのです。
だから、本質的には貸借対照表と繰越試算表は同じものです。

繰越試算表が“部屋着”だとするならば、貸借対照表は“よそ行きの服”といったところです。

前回学習した損益勘定と損益計算書の関係もこれと同じです。
そして、資産、負債、純資産の各勘定の締め切りについてですが、現金勘定を例にとって説明します。

まず、借方合計7,000を出します。
貸方合計は2,550ですが、差し引きで4,450です。
4,450は赤で書きましたが、実体がありません。

単に借方と貸方の金額を一致させるために穴埋めしました。
したがって、これは赤で書きます。

試験問題などでこれが出た場合は、赤ペンが使えないので括弧を使って赤の代わりにすることがあります。
これを「帳尻合わせ」といいます。

次期繰越の4,450が当期の期末の残高で、来年に繰り越します。
翌期の1行目(前期繰越)の4,450からスタートします。
前期繰越まで書くのが帳簿の締切という手続きです。

現金や車両運搬具や借入金や資本金や繰越利益剰余金も同じように手続きを行います。
これは英米式簿記法というやり方で、勘定科目毎に繰り越すため、全体と合っているかどうかは確認ができません。

全体として合っているかどうかは、総勘定元帳の外に繰越試算表を作って全体を俯瞰します。

繰越試算表で確認をした後に、前期繰越まで記入して、各勘定の締切を行います。
二重線を引くことで今期の締切を表し、そこから下は翌期ということになります。

パソコン会計の場合はこれを手書きでやることはなく、パソコンが自動的でやってくれますが、こういうことが行われているということを知っておくだけでも違います。
これでだんだん決算の仕組みが分かってきました。

経理実務をされている方は、自分のやっていることが分かってきて面白くなると思います。
少しでも役に立てていただければ幸いです。

次回は簿記一巡の最終テーマ「精算表の作成」という、決算手続の一覧表について学習します。

ではここで今回の学習を終わります。
お疲れさまでした。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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