仕事に使える1級知識 ~ABC=活動基準原価計算~ 【がんばろう!日商簿記1級合格165】

がんばろう日商簿記1級合格、今回は「仕事に使える1級の知識 ABC=活動基準原価計算」というテーマでお話をしたいと思います。

簿記1級の勉強をしていると、工業簿記・原価計算の最後のほうで、いわゆる「戦略的原価計算」という分野を勉強します。

このなかの1つに、1990年前後から脚光を浴びている、アメリカから出てきた理論をご紹介します。

「Activity Based Costing」略して「ABC」と言います。
日本語で言うと「活動基準原価計算」となります。

簿記1級の勉強では「製造間接費の配賦方法をきめ細かにする」というテーマで勉強します。

これはどういうことかというと、日商簿記検定2級の工業簿記では製造間接費を「間接材料費」「間接労務費」「間接経費」と集計しますが、それを「製造間接費」というグループ勘定にいったん集めて、大抵は「直接作業時間基準」「機械運転時間基準」「生産量基準」という形で各製品に配賦します。

ちなみに、直接作業時間についてですが、映画「あゝ野麦峠」のような、いわゆるマニュファクチュア(工場制手工業)の時代で、機械がそれほど重要ではなく、人間の作業時間で工場の生産性が決まっていた時代ならば直接作業時間基準でもいいのですが、今はほとんどが機械なので、機械運転時間などを基準にするしかありません。

そうなると、直接作業時間基準で勉強している簿記2級の内容というのは古いのです。
工業簿記で勉強している直接作業時間というのは古く、今、あのやり方をしていたら生産性が上がりません。

もちろん、機械運転時間基準以外の基準もありますが、何かしらの基準で配分します。
ただ、生産量だと「A」「B」「C」と製品が違っていたら割り振りができないので、やはり作業時間や手間など、比例するような配賦基準を求めて配賦するのが実務です。

受験簿記では直接作業時間が一番わかりやすいのであの方法でやっていますが、前時代的な工場の形態を想定しているものです。

簿記1級でも、実際原価計算や標準原価計算という、制度としての原価計算の場合は直接作業時間が多いのです。

マニュファクチュアの、前近代的な工場を想定したほうが計算しやすいので、簿記1級でも未だにこれをよく使っていますが、実務ではそんなことはありません。

人間がやることといえば、コントロール室に詰めて、時々機械を点検に行くぐらいです。
その点が試験問題と実務では違うので、受験簿記から実務に移行するときには少し頭の切り替えが必要です。

高度成長期は単一製品を大量生産したほうが売れますし、1つのモノを早く作ることが大事でした。

だから配賦基準も直接作業時間のような1つの基準でよかったのです。しかし、今はそうはいきません。

昔は、新しいものをみんなで買いに行く、人と同じものを買うという時代でしたが、今は人と違うことをやるような価値観がありますから、「単一製品・大量生産」はあり得ないのです。

しかし、簿記2級と簿記1級の工業簿記の8割は「単一製品・大量生産」の名残があります。
「組別計算」もありますが、まだまだ少ないです。

簿記1級の過去問レベルや、後半部分になって、やっと今の時代に合ってくるのです。
そして今回のテーマである「ABC」についてです。

製造間接費を構成する様々な活動というのは、本当は何十、何百と多様です。
実務的には、コンサルタントに何百万、何千万と依頼すると、1,000ぐらいのアクティビティをつくります。

しかし、今は中小企業でもABCは導入できます。
最低でも200か1,000と言われていますが、“なんちゃって”でも相当コストはダウンできます。

これは、私は経験があるのです。
中小企業は“なんちゃってABC”がいいのです。
もしよければ使ってみてください。

つまり、工場だけではなくて、非製造業(ホワイトカラー)でもABDを使っています。
無駄な会議が多くありませんか?
あなたの1分はだいたい40円です。

サラリーマンの1時間あたりの平均賃金は2,000円から3,000円です。
たとえば2,400円とすると、それを60で割ったら1分40円です。

あなたの1分の無駄な時間に会社は40円払っているのです。
そう考えると1分も無駄にできません。

1,000万プレーヤーだとしたら、10分で1,000円になってしまうかもしれません。
そうすると1分1分が大事になります。Activity Based Costingは製造間接費を切り分けて、それごとに適切な配賦基準を使います。

簿記1級の勉強をされた方はわかると思いますが、段取り費用は段取り組み替えの回数や、製造を指示する活動は製造指図書の発行枚数などというように、時間数に限らず、簿記2級や簿記1級の途中までにあるような伝統的な計算でやるような単一基準ではないのです。

場合によっては配賦基準を50ぐらい用意します。
工場でもそうですし、現在は物流業や卸売業などにもABCを導入しようという動きがあって、本当に効果が出ています。

得意先別のABCもあって、得意先ごとの活動を見て「この活動はコストが高い」などといったりします。
ポイントは1分あたりの販売費・一般管理費を出すことです。

こうやって細かくアクティビティを分けて、製造間接費または販売費・管理費を割り振る活動が今の最先端の経営活動では中小企業でも必要だと思います。

伝統的な1つの配賦基準による製造間接費の配賦だけではなく、製造現場の方はもちろんですが、非製造部門であってもActivity Based Costingは使えますので、簿記1級のABCや基本的な金額の割り振りの練習をしたあとに、一般的な書籍などでABCの入門を紐解いてみてください。

必ずあなたの仕事のコストダウンに役立ちます。
この低成長時代には、間接費、そして販売費・一般管理費のマネジメントが肝になります。
ぜひ、一緒に頑張りましょう。

ご参考になれば幸いです。
私はあなたの簿記1級合格をいつも応援しています。
ここまでご視聴いただきまして誠にありがとうございました。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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