コマツ3年半後に電力購入を半分に?(日経12*3*8*1)

東電の電気料金の引き上げは、不況に苦しむ企業・家計にとっては超迷惑な話です。

それでいて、電力の供給不足の問題も現実味を帯びてきました。

こうなると、特に大規模な工場を抱えるメーカーなどは、自己防衛のために努力をしなければなりませんね。

そんななか、本日の日経一面では、コマツが主力工場で自家発電設備の活用や省エネ型設備の導入により、電力会社からの電力購入を3年後には半分に減らす計画のようです。

また、日産自動車のようにスマートメーター(次世代電力計)を導入するなど、ハイテク技術を駆使した省力化に本格的に着手する企業なども出てきています。

さて、ここで基礎知識です。

ちょっと地味な話題ですが、工場にとっては設備の血液ともいえる「電力」の供給をつかさどる「動力部」という部門にちょっとスポットを当ててみようと思います。

日商2級レベルの工業簿記で出てくる話です。

工場には、製品を製造する「製造部門」という部署と、製造部をさまざまなかたちでサポートする「補助部門」という部署があります。

舞台で言うなら、「製造部門」が観客に直接働きかけ、売上につなげる役者さん達とお考えいただけるといいでしょう。

「補助部門」は、劇を裏から支える舞台装置、照明、衣裳さんなどですね。

製造部門は「加工部門」「組立部門」「鋳造(ちゅうぞう)部門」「鍛造(たんぞう)部門」などなど、製品の種類に応じて、いろいろな名称がありますが、要は部品を作ったり、部品を組み立てたりするところです。
まさに製品が出来上がるラインであり、イメージしやすいところです。

補助部門は修繕部、動力部、材料倉庫部、工場事務部、など、物は作らないけどモノづくりをする製造部を影から支えています。

つまり、補助部門のお客さんは「製造部門」であり、「他の補助部門」なのですね。

たとえば、工場事務部といえば、工場内での事務管理を行いますから、こまかいところでは給与計算とか総務的な役割とか、経理的な役割をにないます。

給与事務などは、工場内のすべての部門に対してサービスを提供しますね。

さて、本日の時事ニュースに関連する電力供給をつかさどる部門は、名前の通り「動力部」です。

日々生産を続けている工場の機械は全て電気によって稼働しています。

また、工場内での製造活動には大量の電力を必要とするので工場内に自家発電所があったりします。

そこで、動力部は工場内の電気設備を維持管理し、電気を安定して供給することで生産を支えるという重要な役割を担っているのですね。

たとえば施設を巡回したり、他部署からの依頼があれば確認・修理するなどといった現場での作業を行います。

さらに机の上の仕事も重要で、取扱説明書を見ながら設備を勉強したり、電気の使用量の計算、電気工事の見積りや各種資料の作成などもします。

また、従来型の管理ではユーティリティ(水、ガス、エアーなど)と電力データの人手による巡回検針データ入力や、動力管理室に監視員を置いて操作、監視を実施したり、わりと人の作業がありました。

このようなやり方だといざというときに、動力設備異常個所の特定と復旧に時間が掛かったりします。
そこで、近年では、ユーティリティと電力データの自動収集、電力との管理の「見える化」によるエネルギーコスト削減などの取り組みが工場内で行われるようになってきています。

そのようなときに活躍するのがITですね。

事務所にweb端末を置き、遠隔監視による業務の効率化をすすめたり、設備異常個所を自動警報で知らせたりして、人手による監視の場合よりも早期復旧と設備の稼動率向上を達成することが容易になります。

このように、動力部門の役割は、工場内の心臓ともいえるわけで、今後、エネルギーコストをいかに抑えるか、といった課題に明確な答えを出すために、ますます動力部門の存在意義が高まってくると思います。

ちなみに、簿記会計的には、動力部門で発生する費用は、最終的にはすべて製造部門に集計され、そこから各製品に「製造間接費」という費目で費用チャージされるのですね。

この製造間接費は、もちろん売上原価の一部を構成しますから、最終消費者に製品が届く段階で、売価決定の一要素にもなっている、とご理解いただけるとよろしいでしょう。

以上、あまり日はあたらないですが、工場では欠くことのできないパートナー、補助部門と動力部門のお話しでした。

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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