役員報酬の公表が義務化(日経09*9*11)

金融庁は、2010年3月期からの有価証券報告書において、
役員報酬の公表を義務付ける方針を固めた、とのことです。

この時の新聞報道では、「現在は任意になっている有価証券
報告書での公表…」と言っていますが、本当のところ、
具体的な根拠法令ではどのように規定されているのでしょうか。

そもそも有価証券報告書というのは、金融商品取引法を
根拠に開示が義務付けられているものです。

そして、開示内容については
「企業開示等の開示に関する内閣府令」という規則で
詳細に定められているのですね。

公認会計士が決算時の監査で表示の妥当性をチェックする
際には、当然この根拠となるルールと照らし合わせて、
公表前の決算書類を監査する、というわけです。

企業内容等の開示に関する内閣府令なんて、私が監査法人
にいた頃は、監査小六法という分厚い広辞苑のような
書籍を持ち歩いて、それをめくりながら見ていたものです。

今では、ネットでもかなりの部分、見ることができるので
ネット社会って便利ですよね~。

でも、ネット情報の弱点は情報ソースの確実性が保証されて
いないところにあります(一般的)。
ここは、ネット情報をすべてうのみにはできませんよ、
ということではありますが…。

さて、肝心の役員報酬の扱いですが、現在、総額について
会社法では開示が義務付けられている、というわけですが、
有報では、

「提出会社の企業統治に関する事項(例えば、会社の機関
の内容、内部統制システムの整備の状況、リスク管理体制
の整備の状況、役員報酬の内容(社内取締役と社外取締役
に区分した内容))について具体的に、かつ、分かりやすく
記載すること。」

と指示されているのみです。

⇒ http://bokikaikei.net/2009/08/post_705.html

(参考)具体的な開示例(トヨタ自動車)
⇒ http://bokikaikei.net/2009/03/post_616.html

たしかに、カッコ書きで(例えば…役員報酬の内容…)の
ように、例示列挙っぽく書いてありますね。

これが、任意規定と表現された理由でしょう、おそらく。

現実問題、どの会社も雰囲気的には、「例示とは言っても、
みんな出してるんだから、うちも最低限の情報は出さなきゃ
ちょっとヤバいよね~(苦笑)」みたいな感じで、
暗黙の了解で出すでしょうから、準強制みたいなもんです。

こういうの、大人の社会ではあちこちで見られる現象ですね。
さて、記事がテーマとしている役員報酬開示の義務化ですが、
総額開示のほか、支払形態の開示とか、報酬額の決定方法の
開示とかが対象になりそうな感じです。

役員報酬に関する情報の透明性を向上ってことですが…。

ちょっと前に問題になったAIGの役員報酬問題みたいなのは、
どちらかというとアメリカ的で、私の知る限り、ほとんどの
日本企業の社長さんは、あのような感覚を持っていないと、
現在のところ感じています。

つまり、「会社から報酬をたくさん巻き上げてやろう!」と
少なくとも「給料面」で考えている役員さんって、少ない
んじゃないかなあ。

日本の社長さんの平均年収って、だいたい3千万円くらい
ですよ。
日頃私がお付き合いしている社長さんの任務の責任の重さ
を考えたら、ぜんぜん高いとは思えない水準です。

上場企業だって、一部を除いてたぶん似たり寄ったりの
水準でしょう。
「滅私奉公」という言葉があまり聞かれなくなって
久しいですが、それでもアメリカで伝え聞く話よりは、
かなり日本の経営者の方は一部を除いて「報酬面」では
質素です。(別の部分では分かりませんが…)

そのような日本におけるガバナンス事情を考えると、
はたして「役員報酬の開示を増やす」ことにどれほどの
意味があるのか…。

週刊誌の芸能ネタではないのですから、会社をちゃんと
運営しているなら、よほどひどい状況でもないのなら、
ほっといてあげてもいいんじゃない?と思ったりします。

繰り返しになりますが、日本とアメリカの役員報酬事情は
かなり違うと思います。役員の意識も違うと思います。

役員報酬の公表に関するルールの変更(改正という言葉は
個人的に好きではないので、めったに使いません)は、
私見では、あまり効果がない末節的な話だと思います。

少なくとも、日経一面に乗せるほどの重要な話では
無いと思いますよ~。9月11日は、ほかに
大きな話題がなかった、ということでしょうか。

「日本」の役員に関連して企業が直面している問題は、
もともとアメリカと比べても大した額じゃない報酬面
じゃありません。

むしろ「経営哲学を備えた後継者が育っていない
問題の方が大きいです。
最近の不祥事などを見てもわかりますよね。

コーポレートガバナンスで、役員報酬よりも、
役員の後継者候補に関する力量や経歴・育成方法何かを
開示したほうが、私はよほど興味を持ちますが…。

以上、役員報酬に関する話題でした!

柴山式簿記講座受講生 合格者インタビュー
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